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この作品は藪を巡っている。名もなき河川敷の藪は大自然にはほど遠く、どこにも所属せず永続しない。「藪医者」と言えば腕の悪い医者で、英語でもbushには「二流の、素人くさい」の謂がある。藪は胡散臭く定まらないものだ。
自然は御しがたく、あるいは深淵で圧倒的、一方で人工は統御され秩序立っている、とわたしたちは軽々に考える。しかしこれらは簡単な対置構造を成すものではないし、対置自体が一つの観念に過ぎない。
実在するのは観念や構造よりも曖昧な藪である。藪において自然は時にかえって無機的幾何学的となり、また人工が模糊として秩序を失うこともある。両者は胡散臭く混然とし、かといって一者に溶け合うでもなく、幾重にも折り重なった二つより多くのもの、数え得ぬものへと散開していく。それは一つあるいは二つの観念より力強く豊かである。
2022年12月、個展「Bush」開催(Place M)